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チャップリンの映画にカット割りを学ぶ〔3〕

映像演出論・第3回目(10月10日の授業より)

1931年に制作された
チャップリンの『街の灯』
前回で学習したOL(オーバーラップ)やFI(フェードイン)、FO(フェードアウト)など、カット割りによる時間の創作のイメージを、さらにふくらます表現が作品の中で使用されている。
リュミエール兄弟の映画が発表されてから、約30年しか経っていないこのころに、現在使用されているカメラワークの多くは登場しており、的確な演出表現として使用されていることに驚かされる。


本日は 
PAN(パン)

『街の灯』の前半に用意されている、チャップリンが盲目の花売りの娘と初めて出会う大切なシーンで、とても効果的にPANが使用されているので紹介する。

街の灯PAN1
街の灯PAN2
街の灯PAN3・2
街の灯PAN4 
街の灯PAN5-2 街の灯PAN6 街の灯PAN7 街の灯PAN8

カメラが、観客の目になった
すばらしいカメラワークとカット割りだ。

このシーンで使われているPANは
奇をてらったところがななく、素直に構図の修正が行われ、観客に何を見てもらいたいかという画面の主題が明確だ。

新しい映画は
これでもかというぐらいにカメラポジションを変え、やりすぎるぐらいにカメラの視線を変えるが、ここでのチャップリンは、舞台の上の芝居をじっくり見せることに専念している。
 
映画を撮り始めていた
当初は、そんな舞台の芝居の記録の発想で映画が作られていた。
『街の灯』の最初のシーンで、カメラポジションもアングルも完全に変えてしまう「ドンデン」というカット割りを使用しているチャップリンだが、このシーンでは、オーソドックスに、じっくりと芝居を眺めているかのように カメラは観客席側にとどまりイマジナリーラインはけっして越えない。
ただし、
かつての、舞台上の芝居を記録するだけのような撮り方ではなく、ハッキリと、映画のフレームの存在と演劇の舞台とを別のものとして認識しながら映画を作っている。
カメラが、観客の視線と一致していることにシッカリと気づいていて、作家が見てもらいたいものに観客の視線を誘導させるようにPANを使って演出している。
そして、そのタイミングとスピードも絶妙だ。

【構図を修正するFollowPAN
舞台感覚で映画を撮っていたころは、フレームを芝居の枠として認識し、その枠から芝居がはみ出さないように演技し、撮影されていた。
もしくは、あらかじめ必要な舞台を全景でとらえておいて、必要な動きや出来事をはみ出すことなく撮影できるよう撮影されていた。
映画のフレームを、ショットサイズから構図を作ることを覚えてからは、役者が動くことによってフレームから出てしまう場合、動きを追って(フォロー)カメラの視線を付けて撮ればいいことに気づく。

『街の灯』では、上記コンテのカット1カット6カット9で使用されている。


【作家の気持ちを伝える視線誘導PAN
観客は、画面の中の大切なものは画面の中央で見ようとする。
画面を動かすことで一番見せたいものを画面の中央に持って行き、意図的に観客の視線をそちらに向けさせる。
ズームや移動撮影が自由に使える今日の撮影では、ショットサイズを変えながら構図の調節を行っている。
『街の灯』ではカット10カット12で使われているが、紳士の車とチャップリンと彼女をシンプルな位置関係に配置し、とても明快な見せ方で表現できている。
PANすることで、左右の、車と彼女がフレームに出入りし、チャップリンを中心に、どちらか片一方に意識を向けることになるので作家の意図がスムーズに伝わる。


PANがあれば
ワンシーンワンカットで見せることも可能だが、10カットの画面でカット割りして見せている。
カット2、3、4、5は
チャップリンと彼女の表情を大切にしたい画面で、アップショット(バストショット)サイズが使用されている。
カット5はフレームアウトで終わるが、完全に画面からは消えていない。
つづくカット6もフレームインで示したが、カット頭にチャップリンはすでに画面の中にいる。
アクションが途絶えることなくつながるように画面に残している。
タイミングが計算された編集だ。

カット6は、このシーンで一番長いカット。
ここは、二人の演技に注目。
チャップリンは彼女が盲目だと気づいていない。
彼女の差し出す片方の花を指差して、こちらをくださいと示すが、目の見えない彼女には伝わらず、もう片方の花もチャップリンに差し出す。
お金が無いチャップリンは、両方買わされると思い(?)最初の1本を再度注文する。
もちろん観客も、
ここでは彼女が盲目だと確信を持てていないはず。

カット7は
彼女が盲目だとハッキリわかるカット。
イマジナリーラインを守って、彼女の表情やしぐさがわかるショットサイズで。
アングルは水平から俯瞰へ。
これは、高い位置にあるチャップリンの視点と、しゃがんで低い位置に移動した彼女の位置関係を示すアングルでとても自然。
よく見ると、構図を修正するように、微妙にカメラを動かしてFollowしている。

カット9で
劇中のチャップリンも彼女が盲目だということに気づく。
観客はすでに気づいていることなので、わざとらしい気づくアップショットは使わない。
紳士的に振舞うチャップリンは素敵だ。
次のカット10へは、サイズが変わるカット割りだが、二人の握った手に「視線の一致」がされている計算された編集なので、まるで複数カメラで撮影されたかのようにスムーズにつながっている。
こんなにスムーズなつながりは、撮影のときに充分に構図が計算されていなければ実現しない
偶然の可能性が高い見事な編集だが、最高に映画らしいつなぎなので、ぜひ見習いたい。

 

トーキー映画 
ではないが、音楽はオリジナルスコアが用意されている。
チャップリンのオリジナルだ。
映画は動いて音も大切なので、ここで紹介したシーンを含むYouTobeを画面に貼り付けた。


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  • 2010-10-28
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大阪で、アニメーションの仕事に関わり、現在は、大阪デザイナー専門学校(旧称・大阪デザイナー学院)で、アニメーション学科とキャラクターデザイン学科の1年生2年生の担任をしています、森宏樹です。 手技や映像に関する授業を担当し、描いたり作ったりの指導をしています。

MORI Hiroki

Author:MORI Hiroki
たった15秒や30秒のコマーシャルが、大きな映画にも負けない感動を与えてくれる。
カメラマン宮川一夫が撮影した「トリスウィスキー」の作品は、大好きなCFのひとつ。

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