キャニメーションの森
2006年4月から開設していましたブログ「アニメーションの森」の続編です。デザインの専門学校で一昨年前40周年を迎えたアニメーション学科の学生たちの授業の様子やキャンパスレポート、卒業生の活躍を主に更新しておりますが、その役割はODCのホームページに任せて、ここのところは、プライベートなことをつぶやいています。
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不人気だった大顔面に愛を込めて
今年度より
デッサンの実習は大きく様変わりします。
まず
これまでのデッサン室が無くなって、本館の地下1階に移設します。
新しい
デッサン室です。

現在のアニメーション実習室の真上が新デッサン室になります。
地下なので、以前のような高い天井の教室ではなくなりました。
あの、外から見学可能なオープンな教室でもなくなりました。

旧デッサン室は、姉妹校が使用する、他学科の実習室になります。
進学検討者たちは、かつてのデッサン室をどう見ていたのでしょうか?
あの、外から見える教室を見て「絵を描くことを学べる学校だな」と眺めてくれていたのでしょうか?
描くことを学べるイメージを大切にしていた、云わばODCの顔のような教室でしたが、どんどん様変わりしています。
あのデッサン室は先生によってはブラインドを降ろして、ワザと外から見えないように授業をされていた方もおられましたが、私はいつも、外向けのデモンストレーションだと思い、わざと丸見えの中で学生たちに課題制作させておりました。
移設と同時に
倉庫に引っ込めてしまう石膏像もあります。
「大顔面 石膏」がそうです。
ここのところ、カリキュラム課題からも消されてしまいました。
古い卒業生たちなら、皆さん記憶しているはずですが、入学してきてからまず最初に描かされた顔だけの石膏です。
新しく出来た
マンガやコミックイラスト学科の学生たちから、「ごちゃごちゃしていて描き辛い」「顔が怖い」と不評だったことが課題から省かれた主な理由です。
しかし
この大顔面面取りは、デッサンが何たるかを学ぶのに、教材としてとても便利な対象でした。
倉庫に眠ってしまうことにもったいなさを感じ、教材としてファンだった私のひとりよがりで、アニメーションの制作ロームのインテリアとして壁に掛けました。

突然の
登場で、新入生も新2年生もびっくりするかなぁ?
恐がるかなぁ?
ということで
なぜ、「大顔面の面取り」が教材として優れているかの持論を述べます。
まず、面取りについてですが
将来様々な立体物を描写表現していく時に、対象を単にシルエットでとらえて線で描いていく、言わばスケッチの技術だけでは絵の上達はありえないと考えております。
ここのところのアニメーションの画面も、背景がリアルになり、三次元表現になったことで、キャラクターの描写も立体的に描かなくてはならなくなりました。アニメーターは線だけで描けば良いのですが、仕上げがされて背景と同じように色彩が加わってくると、対象を線だけでなく面でとらえて描かなければなりません。
ペンで描かれたマンガの絵と決定的に違うところです。
キャラクターも立体ですから、アニメーターが線でそれを描いたにせよ、立体感のある表現で描かなければならないのです。
立体を描写表現していくためには陰影の描写のテクニックも大切なテクニックですが、面取りの対象は、陰の成り立ちについて観察・認識しやすいということも重要なポイントです。
実際、陰影描写はテクニックが必要で、描き慣れていない学生にとってはいきなりの曲面でつくられた丸像は、とても難しい課題です。
しかし、面取りならば、陰影を描写する前に、各面を形でとらえて「線で」描くことが可能です。
これは、これまでマンガで線で絵を描いてきた新入生たちにとっては、入りやすい課題といえます。

ODCアニメーション学科のデッサンの課題では、最初は陰影の描写をさせずに、形を観察し、まずは、その形をしっかりと描かせることを学ばせます。
同時に、画面の中に、的確に絵をおさめる、すなわち、構図を理解し意識して制作することを大切にして課題に取り組んでもらう学習をします。
面取りのデッサンの学習は、立体である対象を面で観察し、その面の向き(方向性)や流れを感じ取って描写に活かして描くトレーニングに最適な対象なのです。
その
構図についてお話しすると、この大顔面の石膏は教材として良く出来ていて極端なアングルで観察しないかぎり、支持面である用紙に都合良く全体がおさまるような形で作られています。
かつては木炭紙に木炭を使って描くことからスタートしていましたが、この大顔面は、木炭紙の大きさとほぼ同じ大きさに作られていて、縦横の比率も、画面に合うような比率になっているからです。
これって、初めて制作する初心者にとってはとてもありがたいことです。
しかし、「木炭」も、他学科からの要望で使用画材から抹殺され、鉛筆描写から入っていくカリキュラムに統一が図られました。
確かに鉛筆は、学生たちにとっては使いやすい、使い慣れた画材ではありますが、私の持論は
「鉛筆は描写のための画材」
「木炭は描いたものを“消す”画材」
だと思っています。
まだ、描く技術を充分に手に入れていない新入生に鉛筆を持たせるのは少し早いと考えます。
木炭の「簡単に消すことが出来る」特性を利用して、間違ったら勇気をもっ「間違っていたら消す」ことを学習することは、描写の前に「観察」が大切であることを徹底するのに、とても都合の良い画材でした。

大顔面の話しから
木炭の話しに逸れてしまいました。
元の「面取り大顔面の教材としての魅力」に戻します。
面取りの学習の大切なことと、大顔面の石膏のサイズと形が初心者向きであることを述べてきました。
もう一つの
教材としての魅力は、対象の真ん中が見つけやすいということです。

鼻の頭の、スーパーマンの胸のマークのような六角形の面が、よっぽどの近くから見上げるか上から見下ろさないかぎり、ほぼ画面の真ん中にくるように設計されているのです、この大顔面という石膏は。
この、真ん中を見つける観察テクニックは、今後、どんなものを描くにせよ、バランスよく構図を作り画面におさめることにおいてとても大切なテクニックなので、新入生のデッサンの授業で一生懸命説明することでもあります。
よく観察すれば分かることですが、最初から「鼻の頭が真ん中の水平線上にある」ことを知っていれば、とても簡単に構図をまとめることが出来ますね。
このように
前髪の上のポジション(一番てっぺんの部分)と顎の下のひげのような部分(シルエットの最下部)、そして、真ん中の鼻の頭の位置が理解できれば、画面のイメージを制作の早い時期に手に入れることが出来ます。
後は人間の顔面を描くわけですから、鼻筋を通って顔面の中央を抜けていく「顔面の正中線」上にあるものを描き始め、そこから左右対称に並んでいる目や頬などを描き進めていけば、バランスよくデッサンを描き進めていけるでしょう。
確かに多くの線や様々な面が入り乱れている対象ですが、このように順を追って描き進めていけば思っている以上に簡単に描き進めていくことが出来ます。
アニメーション学科は
今学期も、最初の小型胸像の面取りを陰影をつけて仕上げることよりも、課題のテーマを「観察」「構図」「形を描ききる」に集中して、陰影の描写は二つめの課題から始める計画です。
新入生の皆さん、デッサンをお楽しみに。

デッサンの実習は大きく様変わりします。
まず
これまでのデッサン室が無くなって、本館の地下1階に移設します。
新しい
デッサン室です。

現在のアニメーション実習室の真上が新デッサン室になります。
地下なので、以前のような高い天井の教室ではなくなりました。
あの、外から見学可能なオープンな教室でもなくなりました。

旧デッサン室は、姉妹校が使用する、他学科の実習室になります。
進学検討者たちは、かつてのデッサン室をどう見ていたのでしょうか?
あの、外から見える教室を見て「絵を描くことを学べる学校だな」と眺めてくれていたのでしょうか?
描くことを学べるイメージを大切にしていた、云わばODCの顔のような教室でしたが、どんどん様変わりしています。
あのデッサン室は先生によってはブラインドを降ろして、ワザと外から見えないように授業をされていた方もおられましたが、私はいつも、外向けのデモンストレーションだと思い、わざと丸見えの中で学生たちに課題制作させておりました。
移設と同時に
倉庫に引っ込めてしまう石膏像もあります。
「大顔面 石膏」がそうです。
ここのところ、カリキュラム課題からも消されてしまいました。
古い卒業生たちなら、皆さん記憶しているはずですが、入学してきてからまず最初に描かされた顔だけの石膏です。
新しく出来た
マンガやコミックイラスト学科の学生たちから、「ごちゃごちゃしていて描き辛い」「顔が怖い」と不評だったことが課題から省かれた主な理由です。
しかし
この大顔面面取りは、デッサンが何たるかを学ぶのに、教材としてとても便利な対象でした。
倉庫に眠ってしまうことにもったいなさを感じ、教材としてファンだった私のひとりよがりで、アニメーションの制作ロームのインテリアとして壁に掛けました。



突然の
登場で、新入生も新2年生もびっくりするかなぁ?
恐がるかなぁ?
ということで
なぜ、「大顔面の面取り」が教材として優れているかの持論を述べます。
まず、面取りについてですが
将来様々な立体物を描写表現していく時に、対象を単にシルエットでとらえて線で描いていく、言わばスケッチの技術だけでは絵の上達はありえないと考えております。
ここのところのアニメーションの画面も、背景がリアルになり、三次元表現になったことで、キャラクターの描写も立体的に描かなくてはならなくなりました。アニメーターは線だけで描けば良いのですが、仕上げがされて背景と同じように色彩が加わってくると、対象を線だけでなく面でとらえて描かなければなりません。
ペンで描かれたマンガの絵と決定的に違うところです。
キャラクターも立体ですから、アニメーターが線でそれを描いたにせよ、立体感のある表現で描かなければならないのです。
立体を描写表現していくためには陰影の描写のテクニックも大切なテクニックですが、面取りの対象は、陰の成り立ちについて観察・認識しやすいということも重要なポイントです。
実際、陰影描写はテクニックが必要で、描き慣れていない学生にとってはいきなりの曲面でつくられた丸像は、とても難しい課題です。
しかし、面取りならば、陰影を描写する前に、各面を形でとらえて「線で」描くことが可能です。
これは、これまでマンガで線で絵を描いてきた新入生たちにとっては、入りやすい課題といえます。

ODCアニメーション学科のデッサンの課題では、最初は陰影の描写をさせずに、形を観察し、まずは、その形をしっかりと描かせることを学ばせます。
同時に、画面の中に、的確に絵をおさめる、すなわち、構図を理解し意識して制作することを大切にして課題に取り組んでもらう学習をします。
面取りのデッサンの学習は、立体である対象を面で観察し、その面の向き(方向性)や流れを感じ取って描写に活かして描くトレーニングに最適な対象なのです。
その
構図についてお話しすると、この大顔面の石膏は教材として良く出来ていて極端なアングルで観察しないかぎり、支持面である用紙に都合良く全体がおさまるような形で作られています。
かつては木炭紙に木炭を使って描くことからスタートしていましたが、この大顔面は、木炭紙の大きさとほぼ同じ大きさに作られていて、縦横の比率も、画面に合うような比率になっているからです。
これって、初めて制作する初心者にとってはとてもありがたいことです。
しかし、「木炭」も、他学科からの要望で使用画材から抹殺され、鉛筆描写から入っていくカリキュラムに統一が図られました。
確かに鉛筆は、学生たちにとっては使いやすい、使い慣れた画材ではありますが、私の持論は
「鉛筆は描写のための画材」
「木炭は描いたものを“消す”画材」
だと思っています。
まだ、描く技術を充分に手に入れていない新入生に鉛筆を持たせるのは少し早いと考えます。
木炭の「簡単に消すことが出来る」特性を利用して、間違ったら勇気をもっ「間違っていたら消す」ことを学習することは、描写の前に「観察」が大切であることを徹底するのに、とても都合の良い画材でした。

大顔面の話しから
木炭の話しに逸れてしまいました。
元の「面取り大顔面の教材としての魅力」に戻します。
面取りの学習の大切なことと、大顔面の石膏のサイズと形が初心者向きであることを述べてきました。
もう一つの
教材としての魅力は、対象の真ん中が見つけやすいということです。

鼻の頭の、スーパーマンの胸のマークのような六角形の面が、よっぽどの近くから見上げるか上から見下ろさないかぎり、ほぼ画面の真ん中にくるように設計されているのです、この大顔面という石膏は。
この、真ん中を見つける観察テクニックは、今後、どんなものを描くにせよ、バランスよく構図を作り画面におさめることにおいてとても大切なテクニックなので、新入生のデッサンの授業で一生懸命説明することでもあります。
よく観察すれば分かることですが、最初から「鼻の頭が真ん中の水平線上にある」ことを知っていれば、とても簡単に構図をまとめることが出来ますね。
このように
前髪の上のポジション(一番てっぺんの部分)と顎の下のひげのような部分(シルエットの最下部)、そして、真ん中の鼻の頭の位置が理解できれば、画面のイメージを制作の早い時期に手に入れることが出来ます。
後は人間の顔面を描くわけですから、鼻筋を通って顔面の中央を抜けていく「顔面の正中線」上にあるものを描き始め、そこから左右対称に並んでいる目や頬などを描き進めていけば、バランスよくデッサンを描き進めていけるでしょう。
確かに多くの線や様々な面が入り乱れている対象ですが、このように順を追って描き進めていけば思っている以上に簡単に描き進めていくことが出来ます。
アニメーション学科は
今学期も、最初の小型胸像の面取りを陰影をつけて仕上げることよりも、課題のテーマを「観察」「構図」「形を描ききる」に集中して、陰影の描写は二つめの課題から始める計画です。
新入生の皆さん、デッサンをお楽しみに。

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