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同じシナリオも演出が変われば…【1】

『ニキータ』と『アサシン』その1

『ニキータ』(リュック・ベッソン監督 1990年フランス映画)とハリウッドで後年リメイクされた『アサシン』(ジョン・バダム監督 1993年アメリカ映画)を見比べてみると大変面白い。
監督の演出の違いはもちろんだが、ハリウッド映画とフランス映画の違いを感じさせてくれる。

映画全体の作りや、ラストの違いなど、比較のポイントは映画のどこをとっても見つけることが出来るが、前半のクライマックスの「レストランの銃撃シーン」を取り上げて、ふたつの映画の表現テクニックについてチェックしてみたい。

まずは『ニキータ』から

ニキータ:アンヌ・パリロー
ボブ:チェッキー・カリョ

レストランのシーンは、レストランの描写から始まる。
シーンのアタマは舞台の幕が引かれるような画面から始まる。真っ赤なベルベットのカーテンと、その向こうに現れる豪華で、驚くような高い天井のレストランの内装は、今までのニキータに無縁の世界。

カーテンが開くと、豪華な装飾の高い天井。高級レストランだと一目で分かる。 

カメラはティルト・ダウン(タテPAN)しながらトラック・アップ(移動撮影)
レストランにやってきたニキータとボブの〝見た目〟のカットかと思うが、移動していくカメラの前方からフレーム・イン。

予約席に着く二人。
前もって彼女のために用意していた、テーブルの中央に準備されたプレゼントの箱がも、金色の包装紙。

台詞の説明がなくても、プレゼントが置かれていたことで、リザーブされていたことが分かる。すべて、前もって仕組まれていた事。 

プレゼントのなかみを知らない彼女は、とても嬉しそう。

急いで包装紙を破ってプレゼントのなかみを確かめたいニキータだが、給仕がいるのでボブに「今は開けるな」とたしなめられる。 

『ニキータ』では、二人は向かい合って座っているので、それぞれの顔の表情を見せる場合は、カメラポジションを変え、カットを割って写さなければならない。
二人の位置関係は、ナメ構図によって、確認できる。

プレゼントの包みを破って、箱が現れ、箱のふたを開けると中から拳銃が
というカット割りは、どちらの映画も同じだが、タイミングは少し違う。

どんなプレゼントなのか、ワクワクしながらあけて見ると、中からでてきたのは拳銃。IMI社大型オートマティック・デザートイーグル50AE。 

『ニキータ』の方は、テンポが速い。
一刻も早く、中を見たいニキータの気持ちを、演出では大切にしている。

指令を伝えるボブ。これはデートなどではなく、彼女の最初の実践の任務だったのだ。 

『ニキータ』では、主人公の表情がめまぐるしく変化する。
とても人間味溢れる扱いにしている。
包みをあける前は、子どものようにワクワクしていたし、なかみは拳銃だと知った瞬間からは笑顔は凍りついてしまう。

こんなに表情が顔に出て、訓練されてきた人間なのか? と思ってしまうが、『ニキータ』は、そんな彼女の人間的な部分をクローズアップしていく。 

ボブは先に店を出る。
困った彼女の表情は、デートから任務への突然の変化の戸惑いを表現している。

ボブがさった後も、困惑の表情は続く。 

『アサシン』では、こういった困惑の時間は、短く処理されている。

淑女の象徴、手袋を脱いで、戦闘モードに入っていく。

カットと表情はそのままで、手袋を脱ぐ動作に。 

長いカットは、彼女の心の様子を、見ている者にいろいろと想像させてくれる。

予備の弾倉は胸の下着の中に隠した。遊底を引いて手を離すと、遊底は戻り最初の弾薬が薬室に送り込まれる。 

カットが変わった。
アングルに変化。俯瞰(ハイアングル)にせず、前のカットよりもローアングルにしたのは、彼女の心の中の様子が、弱いところから強いところに変わったことを感じさせる。 

カメラはここで、別のものを映す。

ターゲットの男は、若い女性と楽しそうに食事中。

 暗殺のターゲット。

ストーリーを分かりやすく伝えるなら、ボブがニキータに任務を伝えているところで、説明するボブとこの画面をカットバックさせるという手もあるが、『ニキータ』では、それを行わない。
それは、ニキータの心の様子をカメラが追い続けることを大切にしたかったから。 

席を立つニキータ。(Follow)
無防備のターゲットに近づいていく。(移動撮影)

ターゲットに向けて数発撃つ。
誰に何発撃ったかは分からない。
このカットだけで、打たれた側は一切映さないから。

席をたち、ターゲットとボディガードにむけて引き金を引き、数発撃つ。 

このカット割りの構成も、ニキータの気持ちが物語の主役だから。

レストランの中の突然の拳銃の発砲で、逃げ惑う食事客たち。

天井から見下ろした、俯瞰のロングショット。
ターゲットの男と、ボディガードは撃たれて絶命。
オレンジ色の服を着た女性は画面の下手に逃げていくのが見える。
シーンの頭のレストランの情景描写があったので、銃声を境に、レストランの様子が一変したことが、このワンカットで分かってしまう、すごいロングショット。

真下を見下ろしたような俯瞰のロングショット。リュックベッソンの映画には時々登場します。映画『レオン』にもありました。 

レストランの外に待機していた大勢のボディガードが、店内になだれ込んでくる。
銃声が聞こえたからか、血相を変えた客が店外に飛び出してきたからか。

俯瞰のロングショットはもう一度登場する。
そこには、ニキータの姿はない。
カットアウエイをつないだテンポが小気味良い。

ターゲットの放り出された脚だけで、彼は死んだという説明をつけてしまう。素晴らしい省略のカット割り。  

このカットだけで、ニキータの任務の結果を見せてしまう。
凄い!

ニキータは、言われたとおりに男性トイレに走りこむ。

しかし、説明と違って、窓はふさがれている。

信じられないといった彼女の驚きと、窮地にたたされた悲愴な表情は印象的。

彼女の表情をしっかり伝えようとした画面であることがとてもよく分かるサイズ、アングル。 

このあと、ニキータは厨房に向かう。

鍵のかかっているドアを、拳銃で破壊したので、追っ手に気づかれ、厨房で銃撃戦となる。
ハリウッド映画に勝負を挑むような、激しい銃撃戦。

そんな中で、こんなマンガのようなカット割りも。

床を転がってフレームイン。拳銃を撃つ。撃たれる敵。 さらに狙いをつけ、引き金を引くニキータのクローズアップ。 銃口から飛び出して行く弾痕の見た目のようになって映される。マンガのようなカメラの使い方、カット割り。 前のカットの続きです。カメラは飛び出した弾になって。 タイルを破壊して貫通させ、向こうにひそんでいる敵を倒す。

マンガのコマ割りのようなカット割りにもビックリさせられてしまうけど、このあとはもっと面白い。

まず、唯一の逃げ場であるダストシュートの穴を見つける。
観客は知っている。早く逃げないと、ロケットランチャーが発車される。
ニキータも、大変なことが起こる気配を確信している。
穴の向こうがどうなっているか見えない恐怖。
しかし、このままでは、やられてしまう。
意を決して、ダストシュートにダイブ。
間一髪、厨房は炎に包まれる。

穴に飛び込んだニキータ。厨房は火の海。間一髪。 間一髪、爆発から逃れることが出来たが、穴は思ったより深かった。 でも、その深さが幸い。 大きな炎から逃げることが出来た。

ダストシュートは、まさしくゴミ捨ての穴。
その先は、もちろん、ゴミ箱。

最後は、ネズミかゴキブリが出てきそうな汚いゴミ箱に突っ込むニキータ。 

食道のゴミ箱ということは、生ゴミやら残飯が捨てられているんだろうなあ。
考えただけで、汚い!

倒れたゴミ箱から這い出てくる。とんでもない仕打ち。さらにこの後、アンヌ・パリローは雨の中を走らされる。 

始まりは、明るく、美しく、豪華で、おいしそうで、楽しそうで、可愛くて。
なのに、この落差は何なんだ。
このあと、女優のアンヌ・パリローは、雨の中を走らされる。
ぐちゃぐちゃ。
服も化粧も。
リュック・ベッソンのセンスに驚かされる。なんというオシャレ感覚なんだろうって。

 

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プロフィール

大阪で、アニメーションの仕事に関わり、現在は、大阪デザイナー専門学校(旧称・大阪デザイナー学院)で、アニメーション学科とキャラクターデザイン学科の1年生2年生の担任をしています、森宏樹です。 手技や映像に関する授業を担当し、描いたり作ったりの指導をしています。

MORI Hiroki

Author:MORI Hiroki
たった15秒や30秒のコマーシャルが、大きな映画にも負けない感動を与えてくれる。
カメラマン宮川一夫が撮影した「トリスウィスキー」の作品は、大好きなCFのひとつ。

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