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同じシナリオも演出が変われば…【2】

『ニキータ』と『アサシン』その2

『ニキータ』(リュック・ベッソン監督 1990年フランス映画)とハリウッドで後年リメイクされた『アサシン』(ジョン・バダム監督 1993年アメリカ映画)を見比べてみると大変面白い、の第二回目。

映画全体の作りや、ラストの違いなど、比較のポイントは映画のどこをとっても見つけることが出来るが、前半のクライマックスの「レストランの銃撃シーン」を取り上げて、ふたつの映画の映像演出についてチェックしてみたい。

今回は『アサシン 暗・殺・者』

マギー:ブリジット・フォンダ
ボブ:ガブリエル・バーン

『ニキータ』と同じくレストランに入って来たところから。
(『アサシン』では、この前に、店に入っていくカットがある。)

レストランに入っていくカットの後。レストランのシーンの最初のカットになる。2人がフレーム・インしてくる。カメラはフォロー、トラックバック。実は大きな鏡に映った画面だということが分かるカメラワーク。 

ティルト・ダウン(パン・ダウン)すると、入店した二人がフレーム・イン。
移動撮影で引いて行くと、この画面は、実は、鏡だったということが分かる。
こんな大きな鏡があり、2階席もある立派なレストラン。
『ニキータ』のレストランは、歴史と芸術を感じさせる、いかにもフランス。
アメリカにはそれは無い。
その代わりに、現代的な内装のレストラン。

横に並ぶように座る席。
これだと、いちいちカットを割らずに、二人の表情を見せることが出来る。

2人が横に並んだように着席。ワンショットで2人の表情が見れる。 

その分、引いたショットサイズになるため、それぞれの人物の表情は、遠めで見るような感じになる。
マギーは、誕生日デートに、わくわく笑顔であるが、アップショットほど明確には伝わらない。

用意されていたプレゼントの箱は、どこから出てきたのかは不明。椅子の上に置いてあったのだろうか? 

マギー役のブリジット・フォンダは、お嬢さんタイプ。
ニキータのアンヌ・パリローと比べると、アイドルふうでかわいい。
けっして美人とは云い難いアンヌ・パリローは、元不良娘が変貌していく、運命の悲哀さにピッタリと当てはまったような女優。
ブリジット・フォンダは、父はピーター・フォンダ、おじいさんはヘンリー・フォンダ、さらにはおばさんがジェーン・フォンダという、芸能一家のサラブレッド。
どこの馬の骨か分からない不良娘役は、体当たりだったのかもしれない。

ニキータのような、大げさな困惑の芝居は抑えている感じ。訓練されたスナイパーだという設定を大切にしているのだろうか。 

マギーというキャラクターは、このシーンでは、激しく表情を変えるようなことはしない。
スナイパーに成るべく、訓練を受けてきた優等生といったイメージに思える。

2階席のターゲットに目を向ける… 

『アサシン』では、ボブのターゲットについての説明中に、こんなカット割りが使われる。

ニキータには無いカット割り。マギーの見た目。ターゲットを確認するカット。 

時間と空間が連続した、カットアウエイ。
マギーの目線の先は、2階にいるターゲット。見た目のショット。
この先のストーリーを、分かりやすく見せる、説明的なカット割り。

このあと、説明を終えたボブは退席する。
ここからの展開は『ニキータ』に比べると、テンポよく速い。

任務を知らされた直後は動揺したが、ニキータのように尾を引いた感じではない。 

『ニキータ』のように、感情の変化をカメラがじっくり追う様な感じではない。

ニキータが手袋を外したのに対し、マギーは、ハイヒールを脱ぐという演出。

戦闘モードに入ったシンボリックな表現は、ハイヒールを脱ぐという動作。工夫を感じる。ハイヒールの方が、女性からスナイパーへの変化が分かりやすいかも。でも、『ダイハード』にならなければいいんだが。 

ハリウッド映画は贅沢という、典型的なショット。
スローモーション。
高速度撮影なので、通常のフィルムの倍以上を消費するはず。

このカットは高速度撮影を使っている。マギーのアクションはスローモーションで表現される。ハリウッドらしい贅沢なカメラワーク。 

アクションシーンに、スピードのメリハリをつけるためのアイデア。

任務遂行!
マギーはターゲットを射殺する。
アメリカ映画は、撃たれる相手を、必ずと言っていいほど映します。

リュック・ベッソンの演出とあきらかに違うところは、撃たれた相手をしっかり画面に確認させる。ハリウッド映画は基本的にそういう演出。アメリカの銃社会が、見せることの抵抗を無くしてしまっているのだろうか。

我々も、そんなカット割りが当たり前だと思ってしまっている。

マギーは、迫ってくるボディガードたちを、驚くようなアクションで倒して、聞かされている男性トイレに向かう。

これは、階段を上ってくるボディガードに対し、手前のウェイターを盾代わりにして、ついでに蹴飛ばしてやっつけてしまうところ。
二人は、階段を転げ落ちてダウン。
可哀想なウェイター。

派手なアクション。 

 さらに、ジャンプ一髪。

階段を飛び降りる。たぶんスタントマンを使っている。そんなもんだから。 

ひとつのアクションを、ふたカットに分けて見せているが、マギーの画面の位置が一致しているのは、アクションつなぎをスムーズに見せるための常識。

この後、男性トイレへ。

言われたとおり、窓から逃げようとすると、壁でふさがっている。

ここでは、窮地に追いやられた彼女の表情はさほど重要にせず、塞いだ壁が画面の主役。

ニキータでは表情を見せるカットだったが、こちらは閉ざされた窓の向こうの壁が画面の主役。 

拳銃で、煉瓦の壁をガンガン叩くので、追っ手に気づかれる。

気配に気づいて、男性トイレにやってきたボディガード。
目の前に現れたかわいい女性に「ええっ!?」
隙を見せてしまいます。
案の定、やられてしまいます。

『ニキータ』には無いユーモア… 
女性だと気を緩めた馬鹿な男は殺される。 

こういった、笑ってしまうような箇所が、結構出てきて楽しいのが『アサシン』

舞台が厨房に移ります。

マギーに続いて、追手もなだれ込んで来ます。
銃撃戦。

巻き添えを喰らって命を落とすコックたち。
可哀想。

ハリウッド映画は、映画の中で人が死ぬことに抵抗が薄いようだ。このコックたちは巻き添えに遇い… 
可哀想に、死んでいく。 

ハリウッド映画にはよくある見慣れた光景。
通行人、客、たまたまその場に居合わせた人も、撃たれたり轢かれたり巻き込まれたり…、あるでしょ!?

画面を斜めに傾けた、不安定なイメージ。
ついでに、スローモーション(高速度撮影)。

カメラを斜めに傾けて、迫力をねらったカット。さらにスローモーションである。 

この場合は、「アングルがついている」とは言いません。

床に横たわったマギーに見えたものは、追手の足。
もちろん、敵だから撃ちます。

床に転がったマギーの見たものは、追っての足。撃ちます。 
横長のシネマスコープにピッタリな構図。画面いっぱいにブリジット・フォンダが映し出される。 

シネマスコープサイズの画面は、人間が横になった時に、とてもまとまりよい構図になります。

階段のジャンプといい、このダイビングといい、アクション派手派手のハリウッド映画です。

これも、ハリウッドらしい派手なアクション。やっぱりスタントマンだろうか。 

この後の展開は、ロケットランチャーの登場です。

『ニキータ』では、何かよくわからないが、好くない事が起こりそうな予感を感じているニキータだったが、『アサシン』のマギーは、しっかりと見て確認するカット割りです。

『アサシン』では、マギーがロケットランチャーを見て確認する。 
マギーの見た目。ロケットランチャーが目に入る。 

横構図で、舞台を眺めているいるように、ものの動きと距離感が分かりやすい構図。
爆発大好きハリウッド映画は、ひとつの爆発という出来事も、いくつものカットに割って見せてくれます。

ダストシュートに飛び込む。画面下手より、ロケットが飛んでくる。 
『アサシン』は、このくだりを、細かくカット割って見せている。タイミングでつないでカッコよくしているが、同時にカット割りの難しさを知ることになる。 
ダストシュートの穴の中からのショット。 
追いかけるように、ロケットが飛んでくる。間一髪! 
爆発! 
カットを分けて、大爆発を強調。ロングショットを使ったので、爆発の大きさが分かる。 
こちらは、落下していくマギー。炎が追いかけてくる。 


落ちていくマギーをフォロー。
表情をとらえるために、移動撮影(平行移動)で撮っている。

落下していくマギーのフォロー画面。PANではないので,彼女の表情を捉え続けている。 


ジェットコースターに乗っているかのように、マギーの見た目のイメージで使われたカット。

落ちていく先を見せてくれている。親切な見た目のカット。『ニキータ』では汚いゴミ箱だったけど、『アサシン』はどうやら洗濯カゴ。 

洗濯カゴに突っ込むマギー。

やさしくて良かったね、ブリジット・フォンダさん。 
役者の家系で、サラブレットだから、待遇が良かったんだろうか? 

 



『アサシン』の演出は
スマートで、カッコよく、ハリウッド映画らしい華を感じる。
女優のブリジット・フォンダも、アンヌ・パリローのニキータが、育ちも性格も粗野なイメージに対し、洗練された雰囲気がある。
マギーという不良を演じているが、リアリティとしてはどうだったろうか。
映画は〝お噺〟であり、スクリーンの中の〝夢の世界〟でありたいハリウッド映画としては、リアリティよりもエンタテイメントを大切にしたいのだろう。

ハリウッド映画は
監督よりも、プロデューサーの力の方が重い。
映画産業として、完全にシステム化された中で製作されていることで、監督も雇われの身。
よっぽどのヒット作を生み出した大御所監督にならないと、わがままに制作することは難しいはず。

それに対して
フランス映画の場合は
監督とプロデューサーの役割が大きく異なることはないにしても、監督の意向が色濃く作品に反映されると思う。

アメリカとフランスとでは、芸術についてのとらえ方が違う。
歴史も違うし、作家の意識も違うし、扱われ方も違うはず。
ハリウッドが映画をビジネスの道具と言い切っているのに対し、フランスの場合は、〝映画を芸術〟であるという思いが強くあるのではないだろうか。

作品は作家のもの
であると、制作に関わるスタッフも役者も、共通の認識を持っているなら、現場での監督のこだわりは当たり前のことして受け入れられるものだと思う。

つまり
現場の指揮をしている監督の演出計画やひらめきは、アメリカ映画のそれよりも、リュック・ベッソンの方に軍配が上がり、演出の勉強をしている我々には、『ニキータ』の方に、より教材として興味深い材料がちりばめられていると考える。

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大阪で、アニメーションの仕事に関わり、現在は、大阪デザイナー専門学校(旧称・大阪デザイナー学院)で、アニメーション学科とキャラクターデザイン学科の1年生2年生の担任をしています、森宏樹です。 手技や映像に関する授業を担当し、描いたり作ったりの指導をしています。

MORI Hiroki

Author:MORI Hiroki
たった15秒や30秒のコマーシャルが、大きな映画にも負けない感動を与えてくれる。
カメラマン宮川一夫が撮影した「トリスウィスキー」の作品は、大好きなCFのひとつ。

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